アルペンスキー撮影記

毎冬、ヨーロッパアルプスを中心に行われるアルペンスキーワールドカップの魅力を紹介していきます

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全日本選手権雑感

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札幌の夜は関係者の方々と楽しいお酒で、私のシーズン最後の締めくくりにふさわしい夜でした笑。

全日本選手権石井智也、大越龍之介、長谷川絵美選手の優勝で幕を閉じましたが、水がまかれた手稲のコースはワールドカップに十分匹敵する好条件のバーンでした。

今季のヨーロッパは比較的温暖だったため、SLのコースで言うならば、手稲の固さを上回ったと言えるワールドカップのコースは12月のバルディゼールだけでした。

もちろん、すべてのワールドカップコースは事前にインジェクション等で水を雪面に注入し、氷のような斜面をつくっていますが、気温が高くなるとゆるみが出て「ツルツル」ではなくなり、我々カメラマンのスキーでもエッジがかかりやすくなります。

3月の後半でも、マイナス7℃、8℃という手稲の気温はいい環境でレースを行えたひとつの要因でもありました。

少し残念だったのは、毎日の降雪で排雪が間に合わず、少しポールから滑走ラインがはずれると軟らかい雪だまりにスキーをとられて大きくタイムロスすることでした。

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コース整備にもう少し多くの人員がさければ、ワールドカップを行ってもFISから賞賛されるぐらいのレベルのコース環境だったと思います。(写真はSL優勝の大越龍之介選手)

スキージャーナルの伊藤樹哉氏によれば、FECの志賀高原ジャイアントコースはもっと固かったということだったので、日本国内でも十分にワールドカップのコース環境をつくれるということは再確認できました。

今回の全日本選手権スラロームに関して言えば、ワールドカップと確実に違うと言えるのはポールセット。

石井智也選手とも話しましたが、「ワールドカップではこんなまっすぐなセットはない」というのは共通した感覚でした。

最近のワールドカップのSLセッティングは左右に大きくふってあり、カメラマンはアウトポールを結んだ仮想の線よりコース内寄りには入ることができないため、振り幅が大きくなればそれだけ選手の横側から撮ることになります。

選手の横側からの写真は正面からよりも迫力の点で劣ることが多く、最近は以前よりもさらに大きなレンズを使って、より遠くから正面向きでこちらに向かってくるような場面を捉えることがほとんどになりました。

スピードも極端にスローになるほど振り幅があったり、リズムもゆっくりなところと素早いところと変化が激しく、カメラマンも機材やカメラセッティングを変えて「最新のワールドカップセット」に対応していかなければいい写真を撮れなくなってきています。

もちろんこれは、全日本選手権をワールドカップと同じ難易度の高いポールセットにしろという話ではありません。

これは毎年、ワールドカップの男子SLの全レースでコース内を横滑りし、撮影ポジションを決めるためにポールセットを観察し、コーチたちと同じような距離で選手の滑りを自分の目で見ている数少ない日本人の感覚だということです。

もう一つ、ワールドカップと違った点はコースアウトした選手の多さ。

「なかなか、今回のようなハードなバーンで練習する環境がないから固いコースに慣れていない」というのは、毎年のように耳にする言葉です。

なんとか、少しでも若い選手の練習環境がヨーロッパのレベルに近くなることを望みます。

理想はナショナルトレーニングセンターとしてひとつのスキー場を指定し、コースは常にハードバーンの状態でポール練習もふんだんにできる環境ですが、その理想の実現はなかなか難しいのが現状です。

それならばいろいろと工夫が必要でしょう。

全日本選手権終了後、固さが維持されているあいだに手稲で練習することができれば若い選手たちにとっては有効なトレーニングとなるでしょう。できることなら全日本ジュニアチームの合宿をレース前だけでなく全日本選手権終了後も行って欲しかったというのが率直なところです。

勉強だけでなくスキーも「予習」と「復習」が大切で、レースの滑りの良かった点、改善しなければならない点を同じコース、同じ固さで「復習」することも必要なことだと思います。

2011年12月、その年のワールドカップSL開幕戦となったビーバークリークでの優勝後、イビッツァ・コステリッチは勝利の美酒に酔って朝寝坊することなく、月曜の早朝、まだ十分に固さの残るコースで練習してから昼間の便でヨーロッパに移動しました。

ワールドカップのトップ選手も当然のように努力と工夫を重ねています。

斜面に水をまいて固いコースを提供するのはスキー場にとって経営上大きな負担になるのならば、日本全国何カ所かのスキー場で期間を区切り、持ち回りで固いコース環境をつくるというのもひとつの方法だと思います。

もちろん、それには音頭をとる、いや、明確なリーダーシップを持って日本アルペンスキーの将来を明るいものにしていこうというリーダーが必要なのは言うまでもありません。

オリンピックよりもワールドカップで勝つことが重要と考えている私のようなものが言うのもなんですが、オリンピックシーズンが終わり、ひとつの区切りとなった今シーズン、皆川賢太郎佐々木明というスター選手が去った今年、「日本アルペンスキーの将来を明るいものにしていこう」という気持ちのある多くの人たちの「行動」を強く望みたいと思います。

さて、最終戦を終えてすぐ右足首に埋まるピンの除去手術を行った湯浅直樹は今日(25日)、「ヘルニアとのお別れ」をするべく腰の手術を行い、すでに来シーズンに向けてスタートを切りました。

手術の無事成功と順調な回復を祈りたいと思います。

冒頭の写真は湯浅直樹の幼いころからのホームゲレンデ、テイネハイランド、札幌オリンピック女子大回転コースのスタート付近からの風景。モデルは大越龍之介さん笑。